「尊厳介護」という視点で見ると、タイの高齢社会は日本と“似ていく部分”と“本質的に異なる部分”の両方をはっきりと持っています。
タイの高齢社会は、どんな社会になるのか
タイも日本と同様に、急速な少子高齢化の途上にあります。
医療の進歩により寿命は延び、都市部では独居高齢者や老老介護も増え始めています。この点では、日本がすでに経験してきた道を確実にたどっています。
しかし、決定的に異なるのは「人と人との距離感」と「老いの受け止め方」です。
日本と同じところ
・高齢者人口の急増
・家族介護の限界
・介護人材不足
・医療・介護費の増大
・都市化による孤立
これらは、日本とほぼ同じ課題です。
「制度」「効率」「仕組み」だけを見れば、タイもいずれ日本型モデルを参照する必要が出てくるでしょう。
日本と異なるところ
しかし、私は尊厳介護の土台は大きく異なるのではないかと考えています。
- 仏教文化と老いの肯定
タイでは「老い」は未完成ではなく、人生の自然な成熟と捉えられています。
老人は“守られる存在”であると同時に、“尊敬される存在”でもあります。 - 地域と家族の関係性が生きている
地域寺院・近隣・親戚ネットワークが、今も高齢者の生活を支えています。
孤立が起きにくく、「誰かが見ている」社会です。 - 空気・祈り・日常のリズム
朝の托鉢、ゆったりした時間感覚、微笑みの文化。
これは「空気が介護する」社会の原型とも言えます。
尊厳介護という視点で見ると
日本の尊厳介護は、
👉 制度と実践の中で“取り戻そうとしている尊厳”
一方、タイの尊厳介護は、
👉 まだ失われきっていない尊厳を“どう守り、どう進化させるか”
という違いがあります。
つまりタイは、
日本の失敗と学びを取り入れながら、
人間的・文化的な尊厳を残したまま高齢社会へ移行できる、非常に貴重な位置にある社会なのです。
これからの問い
・制度化が進んだとき、人の温度は保てるのか
・効率と尊厳は両立できるのか
・日本の尊厳介護は、タイでどう翻訳されるのか
これらを考えること自体が、
「介護から世界を見る」試みであり、
尊厳介護が国境を越える可能性だと思います。
尊厳Well-Kaigoの視点は、まさにその交差点に立っています。
ここから、これから——
日本とタイの対話から、新しい高齢社会のモデルが生まれる予感があります。


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