NHKワールド放映の夜に、あらためて考えたこと
2026年1月29日。
この日のWAC中央駅・夜ライブは、いつもより少し遅れてのスタートになりました。理由は、20時から放映されたNHKワールドニュース。タイの視察団と日本の高齢社会を扱った特集を、まずはしっかり見届けたかったからです。
WAC中央駅は、「駅」をイメージした情報拠点として、介護とエイジングに関する考えや実践をまとめている場所です。私はここで「介護のOS(オペレーションシステム)は呼吸にある」という視点から、介護の土台となる考え方をお伝えしています。
そしてこの夜のテーマは、「感覚の伝え方」でした。
呼吸もまた、感覚である
呼吸は、意識し続けるものではありません。
ほとんどの時間、私たちは無意識に呼吸をしています。
実はこれと同じように、介護や医療の現場には「感覚」でやり取りされている言葉が数多くあります。
「よく眠れているね」
「今日は少し不安そうだね」
「どこか痛い?」
こうした言葉は、日本人同士であれば、説明しなくても何となく通じてしまいます。
日本語の「感覚言葉」が伝わらない現実
しかし、この“何となく分かる”感覚が、海外の方々には大きな壁になっています。
先日、日本に長く住んでいる中国出身の方から、こんな悩みを聞きました。
「20年日本に住んでいても、病院で“痛さ”をうまく伝えられない」
介護現場でも同じです。
高齢者の「痛み」「不安」「悲しみ」を、言葉として受け止められない――そのもどかしさを、多くの外国人介護人材が抱えています。
ワクワク、シクシク、ズキズキ、ムズムズ
日本語には、感覚を表す独特な言葉があります。

ワクワク
シクシク
ドキドキ
ザワザワ
ズキズキ
ムズムズ
たとえば「今日は頭がズキズキする」「鼻がムズムズする」。
私たちは自然に使っていますが、これを別の言葉で説明しようとすると、意外と難しい。
しかも、これらの言葉は英語・中国語・タイ語にそのまま対応する単語が存在しません。
AI翻訳でも、意味は説明できても「感覚」としては訳せないのです。
技術よりも、先にある壁
外国人介護人材の多くは、技術面ではすでに日本人と遜色ありません。
入浴介助、食事介助、おむつ交換――動作はできる。
しかし、
「ズキズキする痛み」
「なんとなく落ち着かない不安」
こうした感覚のニュアンスが伝わらないことで、心のケアが難しくなってしまう。
これは技術の問題ではなく、言葉と感覚の問題です。
介護教育の“抜け落ちていた視点”
振り返ってみると、私自身も長年、介護教育に携わってきましたが、
「感覚言葉」を正面から教える場を作ってきませんでした。
笑顔、声かけ、距離感、コミュニケーション――
それらは教えてきたけれど、
「ズキズキ」「ザワザワ」をどう理解するか、どう受け止めるかは、扱ってこなかった。
国家資格である介護福祉士の勉強も、実はこの感覚言葉から入った方が、理解が深まるのではないか。
そんな思いが、はっきりと湧いてきました。
「ワクワク教室」をつくろう
そこで私は、新しい取り組みを始めようと考えました。
その名も、「ワクワク教室」。
教育の場というより、仲間のコミュニティです。
対象は、
日本で働く外国人介護人材
これから日本に来る留学生
日本に住む外国人高齢者
そして、外国人と一緒に働く介護事業者
言葉が分からないことで孤立しないように。
一人で悩まないように。
そのための「場」をつくりたいと考えています。
法人向けにも、個人向けにも
ワクワク教室は、個人向けだけではありません。
外国人スタッフを受け入れている介護施設・事業者向けの参加枠も設けます。
「そんなことで悩んでいたのか」
現場の管理者やリーダーが、初めて気づくことも多いはずです。
良い・悪いではなく、新しい時代の介護として、一緒に支えていく。
そのための学び直しです。
感覚と言葉、そして呼吸へ
感覚言葉は、呼吸とも深くつながっています。
交感神経と副交感神経。
緊張とリラックス。
眠れない夜に、どう呼吸を整えるか。
「3秒で吸って、6秒で吐く」
「今日は夜だから、ゆっくり整えて眠りに入ろう」
こうした声かけも、立派な感覚言葉です。
眠れない夜から、静かな尊厳へ
感覚と言葉、呼吸。
当たり前すぎて、仕組みになっていなかったものを、少し意識してみる。
そうすることで、
介護現場も、働く人も、高齢者も、
少しずつ孤立から離れていけるのではないか。
「眠れない夜」は、
尊厳が静かに息づく時間でもあります。
ここから、これから。
一緒に、感覚と言葉、そして呼吸を整えていきましょう。
おやすみなさい。
尊厳共同体|ワクワクスクール(教室)
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