MENU

【尊厳Well-Kaigo】「看取り介護」の要件とは

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


――治す医療から、支える介護へ――

おはようございます。利久です。
本日の「ウエルエイジング・アワー」では、「看取り介護の要件」についてお話しします。東京・隅田川の上空は曇り空。小雨がパラつく朝ですが、静かな川辺から今日も歩きながらお届けします。

「看取り介護」とは何か


まず、「看取り」という言葉そのものの理解から整理してみましょう。
多くの人が「人が亡くなること」そのものを指すと思いがちですが、介護の現場ではもう少し広い意味を持っています。

介護報酬制度における「看取り介護」は、医師が回復の見込みがないと判断した段階から始まる支援です。
これは単に「終末期医療」とは異なり、「治す医療」から「支える介護」へと移行するプロセス全体を指します。
そして、この「回復の見込みがない」という医師の判断こそが、最も重要で、かつ難しいポイントなのです。

「回復の見込みがない」とはどういう状態か
高齢期において、過剰に医療を求めると、結果的に「生きる質」や「人間らしさ」が損なわれることがあります。
長い入院生活によって社会性や生活習慣が失われ、心身の機能が急速に低下するケースも少なくありません。

だからこそ、「治す」ことを目的とする医療の限界を受け入れ、「生き切る」支援へと方向を転換する時期がやってきます。
医師が「もう回復の見込みがありません」と伝え、その判断を本人と家族が受け入れ、介護職・看護職・医師など多職種が連携して支えていく――。
この共通理解があって初めて「看取り介護」が始まるのです。

医療から介護への「バトンリレー」
看取り介護の要件の中でも大切なのが、医療から介護への引き継ぎです。
治療を続ける医療から、「生活を支える医療」へとシフトし、本人がその人らしく最後まで生きることを支援します。

「ターミナルケア」や「ホスピス」と混同されることもありますが、介護現場での看取り介護は少し性質が異なります。
それは「終末期」だけを扱うのではなく、治療を求めない期間すべてを支援対象とするからです。

看取り介護加算と「45日ルール」
介護報酬制度では、かつて看取り介護加算の算定期間が「30日以内」でした。
しかし、現在は「45日以内」へと延長されています。

これは、医療を積極的に行わない期間が長期化していることを意味しています。
つまり、「そろそろ看取り期に入りますね」という時期から実際の最期までが長くなっているのです。

私が特別養護老人ホームの施設長をしていた頃には、「看取り期」が一年以上続いた方もいました。
まさに、「命を支える介護」が長期化している現実を反映した改定といえるでしょう。

看取り介護の準備と説明
入居時に「看取り介護」について説明し、本人や家族の意思を確認しておくことも要件の一つです。
どこまで医療的介入を望むのか、どのような最期を迎えたいのか――これを早い段階から共有しておくことが重要です。

また、看取り介護を行うためには、看護師を中心とした教育体制を整え、職員が共通の理解を持って対応できるようにしておく必要があります。
加算対象となるためには、実際にその教育が行われているかどうかのチェックも非常に厳格です。

「異常死」と判断されないための備え
もし、看取り介護の同意や計画がきちんと整っていないまま入居者が亡くなった場合、
「異常死」として扱われる可能性があります。

その場合、警察が現場に立ち入り、死因の確認や現場検証が行われることになります。
これは施設にとっても家族にとっても非常に負担の大きい手続きです。

そのような事態を防ぐためにも、事前説明・同意・計画が不可欠です。
心肺停止時には救急車を呼ばず、医師の指示のもとで死亡診断書が発行され、葬儀へと自然に進む――
これが、法的にも倫理的にも正しい「看取り介護の流れ」です。

CCRC(生涯居住型コミュニティ)との接点
昨夜、中国の大規模施設を運営する方とオンラインで話をしました。
彼から質問を受けたのは「日本のCCRC(Continuing Care Retirement Community)をどう思うか」ということでした。

日本のCCRCはもともと「地方創生」政策の一環として始まり、都市部から地方への移住促進が目的でした。
しかし、実際の高齢者ニーズ――医療や介護へのアクセス、家族との距離など――とは一致せず、定着しなかったのです。

その代わりに、日本は「地域包括ケアシステム」を整備しました。
住み慣れた地域の中で、医療・介護・生活支援が連携して受けられる体制が全国的に整いつつあります。

「継続するケア」こそが本質
CCRCの本来の理念は「継続性(Continuity)」にあります。
しかし、実際には「元気な人が集まって楽しく暮らす」ことだけに偏り、
介護や看取りといった“出口”の設計が不十分なケースが多く見られます。

私は、この「看取り介護」の仕組みをしっかりと組み込むことが、
真の意味でのCCRC成功の鍵だと考えています。

人の老いは連続的に変化します。
認知症が進行したり、身体機能が低下したり、やがて人生の最終段階を迎えたり――。
この変化に対して、医療から介護へのバトンを自然に渡す仕組みが不可欠なのです。

中国における「看取り介護」の言葉づくりへ
中国ではまだ「看取り介護」という概念が確立していません。
私たちは現在、「臨終照护」という言葉を仮の訳として使い始めていますが、
これから一つひとつ定義を整理し、文化や制度に合わせた言葉を育てていく必要があります。

これから、ここから――「生ききる支援」という視点を
看取り介護の期間が30日から45日に延びたことは、
「治す医療から支える介護へ」という時代の変化を象徴しています。

寿命が延びた現代だからこそ、「どう生き切るか」を支える介護が求められています。
それは、終わりを迎える瞬間を見届けることではなく、
その人が最後まで“自分として生きる”ことを支えるということです。

私たちはこの「看取り介護」を、尊厳の文化として次世代に伝えていく責任があります。

ご質問は本サイトの「お問い合わせ欄」からお気軽にお寄せください。

↓↓↓詳細は音声配信Podcastから「ながら聴取」をしてください。

Let's share this post !

Author of this article

Comments

To comment

Please Login to Comment.

TOC