MENU

【尊厳Well-Kaigo】日本の選択 ― CCRCから地域包括ケアシステムへ

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


――住み慣れた街で、人生をまっとうする社会へ――

はじめに:CCRCという言葉を覚えていますか?
今日のテーマは「日本の選択は、CCRCから地域包括ケアシステムへ」。
少し専門的な言葉ですが、かつて日本の高齢社会で注目を集めた概念です。

「CCRC(Continuing Care Retirement Community)」とは、直訳すると「継続的なケアを提供するリタイアメント・コミュニティ」。アメリカ・アリゾナ州のサンシティという高齢者専用都市から始まったと言われています。
つまり、定年後も医療・介護・生活支援を一体的に受けながら、安心して暮らせる「街」をつくる構想でした。

日本版CCRCの登場 ― 地方創生と高齢社会の交差点
この考え方が日本に入ってきたのは、介護保険制度が始まる前のことです。
当時の日本版CCRCは「地方移住型」として設計されました。
すなわち、都会に住む高齢者が生活コストの安い地方に移住し、地域経済の活性化にもつなげるという「地方創生」政策と結びついていたのです。

しかし現実には、医療体制や交通、家族との距離、冬の寒さなど、地方での生活を継続するためのインフラが整っていませんでした。
結果として、多くの計画が定着せず、モデル事業の段階で終わってしまったのです。

介護保険制度の誕生と「地域包括ケア」への転換
2000年に介護保険制度がスタートすると、日本の介護の方向性は大きく変わりました。
国は「地域包括ケアシステム」という新しい考え方を打ち出します。

その根底にあるのは、「地方に移住して暮らす」のではなく、「住み慣れた地域に暮らし続ける」という発想です。
これがまさに「エイジング・イン・プレイス(Aging in Place)」という考え方であり、今の日本の介護政策の柱となっています。

市町村単位で地域包括支援センターが設置され、認知症グループホームや小規模デイサービスなど「地域密着型サービス」が広がりました。
つまり、“施設中心”から“地域全体で支える仕組み”へと大きく舵が切られたのです。

CCRCが残したもの ― 継続性の思想とまちづくり
CCRCは日本では定着しなかったものの、その中核にある「継続性」という理念は今も重要な示唆を与えています。
「暮らしを継続する」、「介護を継続する」という視点は、地域包括ケアシステムの根幹と重なっています。

ただし、日本型は「地域にとどまる」ことを前提に、福祉・医療・生活支援をネットワーク化した点が特徴です。
これは地方移住を前提としたCCRCとは異なり、より現実的かつ生活者目線の制度へと進化しました。

中国が注目するCCRC ― 広大な国土と都市・農村の格差
一方、現在の中国では、このCCRCが再び大きな注目を集めています。
背景には、急速な高齢化と都市・農村の格差という社会課題があります。

中国のCCRCは、日本とは異なり“都市近郊の大規模開発型”として発展しています。
数千戸の住宅と医療施設、大学、商業エリアが一体化した巨大な高齢者タウンが各地で誕生しており、まさに「高齢者の街」そのもの。
しかし、75歳が80歳に、80歳が85歳になるにつれて、身体機能が変化したとき、そのまま住み続けられるのかという課題が浮かび上がっています。

食事や嚥下(えんげ)ケア、リハビリ、臨終照護(看取り介護)といった、生活の“終わり方”をどう支えるのか。
その仕組みを整えることが、これからの中国の大きなテーマになっていくでしょう。

日本の学び ― 「住み慣れた地域で生ききる」という選択
日本の地域包括ケアシステムは、単なる制度改革ではなく、“生き方の選択”を提示しています。
すなわち、「人生の最期まで、できる限り自分の街で暮らす」という選択です。

ここでは、医療・介護・予防・生活支援・住まいが一体となり、人が地域で“生ききる”ことを支えます。
そしてその根底には、「尊厳」という概念が流れています。

「老いをどう生きるか」を、地域社会全体で共有し、支え合う。
それが日本がCCRCから学び、独自に進化させた「地域包括ケアシステム」の本質なのです。

テクノロジーと介護の融合 ― 変化を続ける社会の中で
現代の介護は、AIやテクノロジーの進化によって新たな局面を迎えています。
診療報酬は2年に一度、介護報酬は3年に一度改定され、6年ごとに同時改定が行われます。
医療と介護の連携、デジタル化、在宅支援など、変化のスピードは加速しています。

こうした変化の中で求められるのは、制度の枠を超えた「つながりの再設計」です。
AIやロボットが活躍しても、最後に人を支えるのは“人の尊厳を理解する心”です。

尊厳ある介護が描く未来
CCRCの理想は、「人生の継続性」を街として形にしたものでした。
日本はその理想を、制度として「地域包括ケアシステム」という形で受け継ぎました。

どちらも目指すのは、「人が最後まで尊厳をもって生きる社会」です。
そのためには、介護・医療・教育・地域づくりを一体化した新しいまちづくりが欠かせません。
そして、そのすべての中心に「尊厳(Dignity)」という価値を据えることが、これからの時代に求められています。

これから、ここから― 日本の経験をアジアへ
今、中国やアジア諸国で進むCCRC型の構想は、日本がかつて歩んだ道でもあります。
日本の経験は、これから高齢社会に向かう国々にとって、貴重な学びとなるでしょう。

「地方移住」から「地域共生」へ。
「街をつくる」から「関係をつくる」へ。
そして、「制度をつくる」から「人の心を支える仕組み」へ。

日本が選んだ地域包括ケアシステムの道は、これからのアジアの高齢社会を導く羅針盤になるはずです。

ご質問は本サイトの「お問い合わせ欄」からお気軽にお寄せください。

↓↓↓詳細は音声配信Podcastから「ながら聴取」をしてください。

Let's share this post !

Author of this article

Comments

To comment

Please Login to Comment.

TOC