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【尊厳Well-Kaigo】食事を忘れる人へ

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


はじめに
皆さま、こんにちは。利久です。
今日のテーマは「食事を忘れる人へ」です。
秋の風を感じながら隅田川沿いを歩きつつ考えを整理してみました。日々の介護の中で「食事を忘れる」という現象は多くの方が経験されるものです。単に「食べることを忘れる」ではなく、「食べたことを忘れる」という特徴的な状況が起こります。これは認知症の周辺症状(BPSD)の代表的なものの一つです。

食事を忘れるという現象


認知症には「中核症状」と「周辺症状」があります。
中核症状である記憶障害や見当識障害の結果として、心理的・行動的変化が周辺症状として現れます。
その典型が「食べたことを忘れる」という行為です。例えば、食後すぐに「私はご飯を食べていない」と訴える状況があります。本人は満腹であっても自覚がなく、強い不安を覚え、家族や介護者に混乱をもたらします。

食事の意味と生活への影響
人にとって「食べること」は生命を維持する基本行為です。
1日3回の食事という習慣は生活のリズムを支えています。それゆえ「食べたことを忘れる」という現象は、本人にとって生きる上での不安に直結し、家族や施設スタッフにとっても困り事となります。さらに、買い物や調理、片付けといった周辺の生活行為にも大きな影響を及ぼします。

対応の基本姿勢
この症状に直面した時、最も大切なことは「否定しない」「責めない」という姿勢です。
「さっき食べたでしょう」「何度言えば分かるの」と強く言ってしまうと、本人の混乱や不安が増してしまいます。特に一緒に暮らすご家族は、日々の疲れやストレスからつい言葉が強くなりがちです。介護職員であっても、理解が不十分だと適切でない対応に陥る危険があります。

そのため大切なのは、「受け止めること」です。本人の訴えを否定せず、「そうですか」と応じる。そして次の行動につなげる工夫をします。ただし、毎回再び食事を出してしまうと過食や栄養管理の面で問題が起こる可能性があるため、場面の切り替えが必要です。例えば、「ではお茶にしましょうか」「綺麗なお花が咲いていますね」と関心を別の方向に誘導することが有効です。

統合的な介護の視点
私は「i(Integrated)−介護=統合する介護」という考え方を大切にしています。食事介護はその中心にありますが、同時に環境(居室の明るさや音、温度)、身体機能(口腔ケアや姿勢)、地域社会とのつながりなど、生活を支える複数の要素を組み合わせて捉える必要があります。

「食べたことを忘れる」という現象も、単なる記憶障害だけでなく、その人の人生背景、今日の体調、家族関係、社会との関わり方などが複雑に関係しています。忘れてしまうこと自体にも何らかの意味がある、と私は考えています。その人が何を訴えたいのかを探ることが、尊厳ある介護の実践につながるのです。

事例検討の重要性
最近特に重視しているのが「尊厳介護事例検討法」です。
「誰が、どんな場面で、どんな表情で、どのように訴えたのか」を多職種で共有し、原因や対応を検討します。アルツハイマー型なのか、脳血管型なのか、レビー小体型なのか、診断や服薬状況も考慮に入れます。そして試行した対応の結果を共有し、良い変化を継続する。この積み重ねが実践力を高めていきます。

「食事を忘れる人」への対応も、在宅か施設か、朝か夜か、どんな状況下で起きたかによって全く異なります。その多様なケースを学び、現場で応用していくことが介護教育の本質だと思います。

尊厳を守るということ
日本の介護保険法第1条の目的には「高齢者の尊厳を保持すること」と明記されています。身体拘束ゼロの取り組みもその実践の一つです。同様に「食事を忘れる人の尊厳をどう守るか」を考えることは、介護の大きな使命です。脳の中で起きていること、その人の人生の歩み、介護職や家族の力。それらを総合して支えることが尊厳介護です。

国際化への広がり
私はこの「尊厳ある介護」を日本の枠を超えて、中国やマレーシア、タイといった国々にも伝えたいと考えています。そのためには、日本の介護士、看護師、相談員、セラピスト、栄養士、薬剤師、医師など多職種が連携したチームを築くことが不可欠です。一人ではなく、皆で取り組むことで初めて国際的な広がりが可能になると信じています。

これから、ここから
「食事を忘れる人」への対応は、家族にとっても介護職にとっても大きな課題です。しかし一人で抱え込んでしまうと心が折れてしまうこともあります。どうか仲間と支え合いながら取り組んでください。私自身も、情報を共有し合えるチーム作りを進めています。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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