MENU

【尊厳Well-Kaigo】徘徊する人へのまなざし

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


はじめに
皆さま、こんにちは。今日のテーマは「徘徊する人へ」です。
介護の現場ではしばしば「徘徊」という言葉が使われますが、その響きには「意味もなくうろつく」「問題行動」という否定的なイメージがつきまといます。

しかし本当に「意味もなく」歩いているのでしょうか。私はそうではないと考えています。

「徘徊」という言葉の背景


かつて日本の介護施設では、「徘徊する高齢者」に対応するために建築様式までも工夫されてきました。例えば回廊型の廊下を採用すれば、補助金が手厚く出る時代もありました。ぐるぐると同じ場所を歩いてもらえれば安全が守れる、職員の負担も減る、そうした発想が国の制度にも反映されていたのです。
しかし近年では、「徘徊」という言葉は差別的であるとされ、大阪や福岡などの自治体では使用を控えるよう指針が出ています。代わりに「外出行動」「歩行行動」といった表現が使われるようになりました。これは大きな前進です。

「お散歩」という温かい言葉
私が以前勤務していた法人では、「徘徊」ではなく「お散歩」と呼んでいました。NHKのドキュメンタリーにも取り上げられたのですが、「今日もお散歩ですか?」と声をかける。その響きには親しみと尊重がありました。
「外出行動」と言うよりも、「お散歩」と言う方が本人や周囲にとって自然で優しい表現になります。例えば施設の廊下や地域の路地を歩いている方に「今日もお散歩ですか?」と声をかければ、次の会話が自然と広がっていきます。「今日は秋空ですね」「風が少し強いので気をつけてください」など、会話の糸口になるのです。

「徘徊」はメッセージである
では、なぜ高齢者の方は歩き続けるのでしょうか。私はそこに「意味」を感じます。認知症の方々の表情を見ると、決して笑顔で楽しげに歩いているのではなく、険しい表情を浮かべて必死に歩いている姿が思い浮かびます。
これは「どこかに帰りたい」「ここは自分の居場所ではない」といった強い思いの表れかもしれません。記憶障害や見当識障害によって、自分がどこにいるか分からない。その不安を抱えながら歩き続ける姿は、私たちに「助けてほしい」「教えてほしい」という無言のメッセージを送っているのではないでしょうか。

環境づくりが支える安心感
このメッセージに応えるには、「意味のある空間」を用意することが大切です。例えば昔の写真や思い出の品が飾られた個室、花や絵画が置かれた廊下、台所の匂いや音が漂う居間。そうした環境が「ここは私の場所だ」という感覚を生みます。
ユニット型特養やグループホームのように小規模で家庭的な空間では、自然と役割や居場所が生まれます。「一緒に食卓を整えましょう」「味噌汁のいい匂いがしますね」といった声かけから、その人の存在が肯定されていくのです。

言葉がけの力
「徘徊」という言葉ではなく、「お散歩」と表現することで、会話の質が変わります。施設では「そろそろお食事の時間ですね」「一緒に台所に行きましょう」といった声かけが、場所や時間の認識を助け、不安を和らげることにつながります。街中で険しい表情をして歩いている方に「お散歩ですか?お手伝いできることはありませんか」と声をかけることも、尊厳を守る関わり方の一つです。

「居場所」と「役割」を保障する
大切なのは、高齢者が「ここにいていい」と実感できる居場所を作ることです。そのためには環境の工夫と同時に、役割を持てる仕組みが必要です。テーブルを拭く、食事を一緒に準備する、花に水をやる――こうした小さな役割が「自分の存在意義」につながります。
役割を通じて安心感が生まれれば、「徘徊」という言葉で括られていた行動も、「生活の一部」として尊重できるようになります。

共に考える姿勢
結局のところ、徘徊とは「困りごと」である前に「問いかけ」なのだと思います。その方が何を探しているのか、なぜ歩き続けるのか。その意味を一緒に考えることが、尊厳介護の出発点です。差別的な言葉で括るのではなく、一人ひとりの表情や行動の奥にあるメッセージに耳を傾けること。それが私たち支援者に求められている姿勢ではないでしょうか。

これから、ここから
「徘徊」という言葉の裏側には、本人の強い思いが隠れています。それを「お散歩」という肯定的な言葉に変換し、環境や言葉がけを工夫することで、私たちは高齢者の尊厳を守ることができます。
どんなに認知症が進んでも、その人にはその人なりの「意味」があり、私たちに届けようとしている「メッセージ」があります。それを理解し、共に歩むことこそが、尊厳介護の実践なのです。

ご質問は本サイトの「お問い合わせ欄」からお気軽にお寄せください。

↓↓↓詳細は音声配信Podcastから「ながら聴取」をしてください。

Let's share this post !

Author of this article

Comments

To comment

Please Login to Comment.

TOC