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【尊厳Well-Kaigo】高齢社会のスローガンは「治療から介護へ」

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


はじめに
本日の「ウエルエイジング・アワー」では、高齢社会における重要なスローガンである 「治療から介護へ」 について考えてみたいと思います。

今朝の隅田川は、青空と雲が交じる少し幻想的な空模様でした。光が差し込みながらも、まだ朝の暗さを残しており、自然の移ろいを感じさせます。そんな朝の散歩の中で浮かんだテーマが、今回のお話です。

中国との対話から見えた課題
先日、中国の政府関係者とディスカッションする機会がありました。彼らが関心を寄せているのは、 「制度設計」と「介護教育」をどう整えていくか という点です。日本の厚生労働省や介護事業者の取り組みを学ぶため、多くの関係者が来日していることも教えていただきました。

中国の現状としては、高齢者は病院に長期的に滞在するケースが多く、医療から生活への橋渡しが十分に整っていない状況があります。日本でいう老人保健施設や訪問介護、訪問看護といった仕組みが未発達のようです。
結果として、治療は受けられても、生活の自立度(ADL)が下がってしまい、退院後に歩けなくなる、日常生活が困難になるといった問題が起きています。

日本が歩んできた「治療から介護へ」の歴史


日本もかつては同じ課題を抱えていました。しかし、1989年の「ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10か年戦略)」をきっかけに、明確な方針が掲げられました。それが 「CureからCareへ」「治療から介護へ」 というスローガンです。

その後、介護保険制度の創設(2000年)を経て、医療と介護の分業と連携が徐々に進みました。病気を治す医療だけでなく、高齢者が暮らし続けるための介護支援を重視する仕組みが整えられたのです。

診療報酬から介護報酬へ、病院から在宅や施設へ――。この大きな転換が日本の高齢社会の基盤をつくりました。

中間施設の役割の大切さ
特に重要だったのが「老人保健施設」などの中間施設です。
病院での治療を終えた高齢者が、すぐに在宅生活に戻ることは難しいケースが多々あります。リハビリを行い、再び生活力を取り戻すための場として、中間施設が整備されてきました。

一方で中国では、この「中間の仕組み」が弱いまま大型の高齢者住宅やCCRCが建設される流れも見られます。医療と介護の連携が不十分なまま施設が先行すると、高齢者の生活の質が守られにくいというリスクも伴います。

介護教育と資格制度の発展
日本の介護教育は「治療から介護へ」という大きな方向性の中で発展してきました。
初任者研修、実務者研修、介護福祉士、ケアマネジャー――。これらの資格制度は段階的に整備され、医療と介護の連携を担う人材が育成されてきました。

特に介護福祉士は、2015年以降、医療的ケアを一定範囲で担えるよう制度改正が行われました。これはまさに「医療から介護へ」の流れを反映した動きです。

また、ソーシャルワーカーや生活相談員、ケアマネジャーといった職種も、医療と介護、生活をつなぐ要として位置づけられてきました。

高齢者の生活をどう守るか
病気を治すことができても、その後の生活が成り立たなければ意味がありません。
段差のある住環境や調理の困難、一人暮らしの孤独感など、生活を取り巻く課題は多岐にわたります。これらに対応するため、バリアフリー住宅、配食サービス、デイサービスなど、多様な介護サービスが発展しました。

医療と介護をつなぐ制度と人材育成の歴史は、こうした「生活を守る」という目的のもとで築かれてきたのです。

中国の9073方式と日本の地域包括ケア
中国では「9073方式(在宅90%、地域7%、施設3%)」という考え方が紹介されています。しかし実際には全国的に統一された方針ではなく、上海市など地方レベルで掲げられたモデルに過ぎないという側面もあります。

日本では「地域包括ケアシステム」として、在宅・地域・施設のバランスを取る仕組みが20年以上にわたって整えられてきました。その背景には「治療から介護へ」という明確な方向性があったのです。

これから、ここから
高齢社会のスローガン「治療から介護へ」は、日本が歩んできた歴史の中で形づくられたものです。
病院中心から生活中心へ――この転換は決して一朝一夕でできたものではなく、多くの制度改革、人材育成、現場の試行錯誤を積み重ねて実現してきました。

これから高齢社会を迎える中国やアジア諸国にとっても、このスローガンは重要な指針となるはずです。
私たちが日本から伝えるべきは「制度」や「技術」だけではありません。そこに込められた理念と歩みを共有することこそが、尊厳ある介護の未来をつくる第一歩だと考えています。

日本が経験したように、医療と介護のバランスを見直すことで、高齢者の生活の質を守る道が開かれていくのです。

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