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【尊厳Well-Kaigo】見当識障害の謎

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


はじめに
おはようございます。利久です。
今日の「ウエルエイジング・アワー」では、「見当識障害の謎」について考えていきたいと思います。

今朝の隅田川は少し曇り空。涼しさを感じる一方で、天気予報では雨の気配もあります。川辺には沢山のサワガニが元気に動き回っていて、その姿を眺めながら歩いていると、自然と「今ここにいる」という感覚を覚えます。

しかし、認知症の方々にはこの「今ここにいる」という感覚が失われることがあります。これが、今回のテーマである「見当識障害」です。

見当識障害とは何か?


見当識障害とは、「見当がつかない」状態を指します。認知症の中核症状の一つで、記憶障害と並んで代表的な症状です。

見当識障害には、大きく分けて3つの側面があります。

場所の見当識障害
どこにいるのかがわからなくなる症状です。自宅にいるのに「家に帰りたい」と訴える、施設にいるのに「会社に行かなくては」と言うのもこれに含まれます。

時間の見当識障害
今日が何月何日なのか、朝か夜かがわからなくなる症状です。中には「私は20年前に生きている」と話す方もいます。

人の見当識障害
身近な人が誰だかわからなくなる症状です。子どもや配偶者の顔がわからなくなることもあり、介護の現場で大きな混乱を招く要因となります。

記憶障害との違い
よく比較されるのが「記憶障害」です。記憶障害は「覚えられない」「思い出せない」といった症状で、主に脳の海馬の働きに関係しています。

一方、見当識障害は記憶だけでなく、空間認知や人間関係、社会的な文脈に影響を及ぼします。場所・時間・人という「自分と世界をつなぐ感覚」が失われていくのです。

この違いを理解することは、BPSD(行動・心理症状)の背景を読み解く上で重要です。大声を出す、帰宅願望が強い、笑わないといった行動も、その根底に「見当識がつかない不安」が隠されているのです。

身体拘束ゼロとの関わり
私は施設長を務めていた頃、身体拘束ゼロへの取り組みに直面しました。当初は「安全のためなら仕方ないのでは」と思ったこともありました。しかし、実践を重ねるうちに「拘束しない方が人間らしい介護になる」と実感しました。

例えば、ベッドから落ちないようにベルトで固定するよりも、その方の行動の意味を理解し、環境を整える方が安心につながります。すると、笑わなかった人が笑うようになり、座れなかった人が一緒に会話を楽しめるようになりました。

この経験から、症状を抑えるのではなく理解することが尊厳介護の核心だと学んだのです。

事例検討と経験の積み重ね
介護現場では、一人ひとり症状の現れ方が違います。それは「記憶」「空間認知」「時間感覚」「人との関係」がそれぞれ異なるからです。

だからこそ、数多くの事例に向き合う経験が大切です。新人からベテラン介護福祉士へと成長する過程は、まさにこの積み重ねです。事例検討を通じて「なぜこの行動が出るのか」「どう対応すればいいのか」を学び、計画を立てる力が養われます。

見当識障害と地域包括ケア
見当識障害を理解することは、地域包括ケアの発展にもつながります。認知症の方が増える中で、地域全体で支える仕組みが不可欠です。

専門職だけでなく、地域住民も含めて「どう支えるか」を共有できれば、どんな人でも暮らせる社会に近づきます。

見当識障害と観光の意外な関係
先日、中国で観光と健康産業の座談会に参加した際、ふと気づきました。実は「観光」と「見当識障害」には深い関係があるのです。

観光とは、旅をし、記憶を呼び起こす行為です。認知症の方が故郷を訪れると、場所の感覚が戻り、昔の仲間と再会することで人の見当識がよみがえることがあります。さらに、懐かしい体験が脳を刺激し、神経伝達物質が分泌され、前向きな気持ちが生まれるのです。

これは単なる理論ではなく、私自身が実際に目にしてきた光景でもあります。

語想法と「旅」の力
私は「語想法」という手法を提唱しています。自分史や地元の歴史を物語として語り直し、記憶と尊厳を結びつけるものです。

これを「旅」と組み合わせると、さらに力を発揮します。懐かしい場所を訪れ、語り、物語を共有することで、人の記憶が再び結びついていく。そこにこそ、見当識障害への希望があるのではないでしょうか。

これから、ここから
見当識障害は認知症の中核症状として避けられないものです。しかし、それを「理解できない行動」として切り捨てるのではなく、「その人の人生の物語」として受け止めることが大切です。

介護者にとっては難しい課題ですが、同時に大きなやりがいでもあります。観光や語想法といった異分野の知見を組み合わせながら、新しいアプローチを試みることで、介護はもっと豊かで希望のあるものになります。

これからも、尊厳を守る介護を軸に「今ここにいる」という感覚を取り戻すお手伝いを続けていきたいと思います。

ご質問は本サイトの「お問い合わせ欄」からお気軽にお寄せください。

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