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【尊厳Well-Kaigo】帰省先になった老人ホーム〜お盆が変えた家族と施設の関係〜

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】

今回の「ウエルエイジング・アワー」では、「帰省先になった老人ホーム」というテーマでお話しします。

今日は8月16日。
夏休みとお盆の真っただ中、多くの人が移動している時期です。車の中でラジオやYouTubeを「ながら聴き」している方も多いでしょう。私自身、以前ラジオ調査の仕事をしていた時に、音声の強みは「ながら」で聴けることにあると感じました。動画やテレビとは違い、耳から入る情報は移動中や家事をしながらでも届くのです。

帰省の意味


「帰省」という言葉は、単に実家に帰るだけでなく、「振り返る」という意味も含んでいます。生まれ育った土地、親のいる場所、すでに亡くなった親が眠るお墓──そうした場所を訪れることは、日本人にとって深い意味を持つ行為です。

しかし、介護が必要な高齢者が増えた現代では、帰省の風景も変わってきました。特に、お盆や正月に「自宅に戻る」ことが難しい高齢者にとって、暮らしている施設そのものが“帰省先”になっているケースが増えています。

老人ホームと「帰る場所」
介護保険制度が始まった当初は、「自宅に戻ることを支援する加算」が存在していました。特別養護老人ホームでも、お盆や正月には一時帰宅を推奨する動きがあったのです。事実、私も家族と話し合い、短期間だけでも自宅に戻る支援をしていた時期があります。

しかし、入居者の重度化や核家族化が進むにつれ、自宅への一時帰宅は難しくなりました。その一方で、施設がユニット型・個室化されることで、家族が施設に訪ねてくる形の「帰省」が増えていきます。

ユニット型特養がつくる「もう一つの在宅」
ユニット型特別養護老人ホームでは、10人程度の小規模グループがそれぞれ個室を持ち、共用スペースで暮らします。個室には家族写真や仏壇を置くこともでき、まるで自宅の一部のような空間になります。

結果として、高齢者が元の家に戻るのではなく、家族が施設を訪ねる──つまり「施設が帰省先になる」現象が起こりました。
外山義先生が提唱した「自宅ではない在宅」という考え方にも通じます。たとえ元の家が存在しても、今暮らしている個室が生活の中心であり、そこが家族にとっての“実家”になるのです。

家族と施設の新しい関係
この変化は、高齢者本人にとっても家族にとっても大きな意味を持ちます。
「帰れなくて申し訳ない」という思いや、「会いに行けなくて心苦しい」という感情を和らげる役割を、施設が果たすようになりました。

日常的には介護士が“セカンドファミリー”として生活を支え、医師や看護師が健康管理を行います。そして年に数回の特別な日に、実の家族=“ファーストファミリー”が訪れる。
この役割分担は、地域包括ケアシステムの中でも重要な意味を持っています。

個室化がもたらした文化の変化
従来の4人部屋から個室への移行は、効率や安全性への懸念もありましたが、研究や現場の経験から、個室の方が自立支援につながり、介護負担も増えないことが分かっています。もちろん、適切な運営や教育体制が前提です。

個室は高齢者にとって生活の場であり、家族にとっては訪ねるべき“家”となります。これはお盆の過ごし方や、日本の家族文化に小さくても確かな変化をもたらしました。

帰省先=生活の場


老人ホームは「入所施設」ではなく「生活の場」です。介護職員は日常生活を支え、看護職員や医師は医療的な安心を提供します。
日常をつなぐのはセカンドファミリーとしての介護士、非日常を彩るのはファーストファミリーとしての家族。
この両者の連携が、1年を通じた高齢者の生活の質を高めているのです。

これから、ここから
8月16日、多くの人が故郷へ、あるいは都会へと移動します。
直接帰省できない場合でも、手紙や電話でつながることはできます。そして、親の暮らす老人ホームが「帰省先」となることも、今の日本では自然な流れになっています。

帰省のシーズンに思うことをお伝えしました。

私はこの変化を非常に重要視しています。なぜなら、それは高齢者と家族の関係を新しい形で結び直し、尊厳ある暮らしを支える介護の価値を示しているからです。
これからも、介護現場と地域が一体となって、この関係性を守り、育てていくことが必要だと感じています。

共感いただける方、活動に興味がある方は末尾のお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。

↓↓↓詳細は音声配信Podcastから「ながら聴取」をしてください。

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