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【尊厳Well-Kaigo】怒りをコントロールする脳

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】

〜メタ認知とDSO理論でBPSDに向き合う〜

本日のテーマは「怒りをコントロールする脳」です。
私は現在、日本の尊厳ある介護をテーマにした認知症介護プログラムを、中国やマレーシア、タイへ届ける取り組みを進めています。その中でBPSD(行動・心理症状)の中でも特に「怒り」に焦点をあて、教育の視点から整理を続けています。

なぜ「怒り」に注目するのか


介護現場では、利用者の方が突然怒りをあらわにする場面があります。
心理学用語では「易怒性(いどせい)」と呼ばれ、瞬間的に怒る特徴が見られます。


先日の中国向け講座でも、「怒っている人への対応方法を教えてほしい」という質問をいただきました。

まずは「なぜ怒りが生まれるのか」を考えることが大切です。
いきなり対応策を探すのではなく、メタ認知──つまり、一歩引いて客観的に状況を俯瞰して捉える視点が必要になります。

怒りの背景を探るメタ認知的アプローチ
私たちが怒るとき、多くは「自分がうまくいかない」と感じた瞬間です。
政治家が社会制度に対して怒る社会的な怒りの場合もありますが、介護現場で見られる怒りは、本人の感情や身体的変化と深く結びついています。

脳科学的に見ると、怒りは前頭前野の抑制機能低下と扁桃体の過剰反応が関係しています。加齢や認知症による脳機能変化が、こうした制御の難しさを生み出します。

怒りから笑顔へ──二軸の目標
BPSDへの対応では、次の二つを目標にしています。

怒りを沈める
笑顔を引き出す

この「怒りから笑顔へ」という流れを意識することで、事例検討やロールプレイの方向性が明確になります。また、無関心や無表情といった内向きの反応も、笑顔への変化という同じゴールに向けて捉えることができます。

怒りの広がりとBPSDの関係
怒りは単独で存在するだけでなく、他のBPSD症状に影響を与えます。
例えば、

帰宅願望
モノ盗られ妄想
食事拒否
介護抵抗
これらの背景に「怒り」が隠れている場合があります。
だからこそ、怒りの原因を見極め、改善策を考えるための「メタ認知」が必要なのです。

現場で実践したカード法
私が過去に行っていた方法の一つに「カード法」があります。

笑顔のときはピンクのカード
怒っているときはブルーのカード
それぞれに「いつ・どこで・誰と」を記入して貼り出し、状況を可視化します。
この分析から、怒りや笑顔が現れる条件が見えてきます。
今でいうメタ認知的なアプローチの原型でした。

DSO理論との結びつき
怒りを和らげる鍵のひとつに「セロトニン」があります。
セロトニンはリズム運動によって分泌が促され、感情の安定につながります。
これはDSO理論(ドーパミンD・セロトニンS・オキシトシンO)のSにあたり、介護の中に組み込むことで表情が動き、笑顔に変わる可能性があります。

事例検討での活用
事例検討の際は怒りの発生条件を特定
原因を多面的に分析(脳・人生背景・介護方法・家族関係)
環境や関わり方を変えて試す
これを繰り返すことで、ブルー(怒り)がピンク(笑顔)に変わる瞬間をつくります。
興味深いのは、介護士や看護師によって反応が異なること。つまり、「関わり方」が大きく影響しているのです。

AIによる分析と教育への応用
現在はAIを活用し、このプロセスを理論化・仕組み化することを目指しています。
これにより、日本から海外へ尊厳ある介護の教育を届ける際も、オンラインや教材を通じて一貫した内容で伝えることが可能になります。

基礎教育の重要性
高齢社会において、最も不安視されるのは「認知症になること」です。
だからこそ、事例検討の前に、脳科学・人生背景・身体・医療・食事・呼吸・睡眠・制度といった基礎知識をしっかり学ぶ必要があります。
その上で、「怒りから笑顔へ」という軸を持った教育プログラムを進めることが効果的です。

6秒ルールと感情のコントロール


ビジネスの世界では「アンガーマネジメント」という言葉があります。
瞬間的な怒りは6秒で消えるため、その間をやり過ごすトレーニングが有効です。
介護教育でも、ロールプレイや事例検討を通じてこの感情コントロールを身につけることが大切です。

これから、ここから──社会を変える「怒りから笑顔へ」
メタ認知的思考とDSO理論を組み合わせた介護教育は、

怒りを沈める
笑顔を引き出す

という二軸の目標を実現します。
これは介護現場だけでなく、日常生活やオンライン会議など人との関わり全般に応用できるスキルです。
尊厳ある介護を通じて、怒りから笑顔へ、無関心から笑顔へ──その変化が社会全体を温かくするのだと信じています。

今日も良い一日をお過ごしください。

興味がある方は、末尾の問い合わせフォームからご連絡下さい

↓↓↓詳細は音声配信Podcastから「ながら聴取」をしてください。

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