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【尊厳Well-Kaigo】認知症介護と鍼灸のあたらしい関係

【末尾に英語、中国語、タイ語の翻訳文を挿入しております】
文末附有中文、泰文和英文翻译
ส่วนท้ายมีการแปลเป็นภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษ
Translations in Chinese, Thai, and English are provided at the end.


〜薬でもない、制度でもない、もう一つの可能性を探して〜

鍼灸との偶然の出会いから
今回は、私が最近体験した「鍼灸と認知症介護の連携」に関するお話です。ある日、以前からご縁のある鍼灸師の方と会話する中で、「認知症に対して鍼灸でアプローチしている」という取り組みを耳にしました。

まさにその同じ日、私の中国介護教育のパートナーが中医学の大会で日本の介護について講演していたことを知り、偶然の一致に驚きました。

こうしたご縁をきっかけに、「鍼灸と認知症介護の可能性」について、深く考える機会を得たのです。

中国では進む「中医学と医療の融合」


中国では、中医学(漢方・鍼灸など)が医療施設や病院の中に当たり前のように組み込まれています。西洋医学と東洋医学が共存し、包括的な視点で治療が行われている現実を私も何度か目の当たりにしてきました。

しかし、介護、特に「認知症介護」の領域では、まだ中医学の視点が深く取り込まれているとは言え内容です。
医療としての認知症理解は進んでいても、生活支援や非薬物療法の観点では、まだ入り口に立ったばかりという印象です。

鍼灸がもつ「薬でも非薬でもない中間的な力」
認知症の進行やBPSD(周辺症状)に対しては、これまで「薬物療法」と「非薬物療法」の二極が存在していました。しかし、鍼灸はその中間に位置するような印象を私は受けています。

薬のように化学物質で作用するわけではなく、かといって完全な非薬物的支援とも違う。たとえば、脳の特定の部位に刺激が伝わることで身体機能が改善することがあり、膝の痛みが和らいだり、歩行がスムーズになったりするという報告もあります。

これは「脳を刺激すると身体が変わる」という、まさに脳科学的な視点からも注目されるべき現象だと感じています。

スケールには出ない「改善の兆し」
鍼灸を取り入れている認知症の方々に、明確なスケール(MMSやFABなど)上の改善が見られることもあれば、数字には表れないけれど、明らかに人間らしさや生活意欲が戻ってきたというケースもあるそうです。

ここで大切なのは、「検査結果」だけではなく、「人をどう見るか」という視点です。記憶や計算力という評価項目だけでなく、その人がどんな人生を歩んできたのか、どんな文化で育ったのかといった「アイデンティティ」への理解が、より本質的な支援へつながっていくのではないでしょうか。

日本と中国をつなぐ統合の可能性
日本では、認知症介護が介護保険制度の起点として機能してきました。グループホームや特別養護老人ホームが認知症高齢者を受け入れる設計で発展してきたのです。

一方、中国ではまだその入り口に立ち始めたばかり。もし、鍼灸という伝統技術を「認知症介護」の文脈に接続できれば、中国にとっても、日本にとっても、非常に意義のある連携が生まれるはずです。

必要なのは「選択肢」の拡張
選択=倫理→尊厳

私が今回強く感じたのは、「選択肢があること」そのものが尊厳である、ということです。薬が効く人もいれば、鍼灸が作用する人もいる。何が正解かではなく、何を選べるか。選べる社会であることが、すでに一つの支援だと思うのです。

科学的エビデンスを大切にしながらも、事例を積み上げ、実践と検証を繰り返す。
この地道な作業を通して、日本の尊厳ある介護を、より深く、広く伝えていく準備ができるのではないでしょうか。

i-Kaigo(統合介護)への一歩として
私の提唱する「尊厳Well-Kaigo」は、「i-Kaigo(統合介護)」という考え方にもつながっています。医療・看護・介護・鍼灸という異なる専門性を、ひとりの人間の生活に向けて統合していく。この流れを、日中間で実現していくことが、今後の高齢社会への新たな答えになると信じています。

プロフェッショナルが連携し、互いの知恵を持ち寄ることで、ようやく「本質的な支援」に近づけるのです。

これから、ここから
今回の出会いをきっかけに、私たちは新しい可能性を見つけました。すでに鍼灸の技術を持っている方、認知症について学び続けている方、それぞれの知見と経験を繋げることで、まったく新しい介護の形が生まれるかもしれません。

「鍼灸と介護の連携」というテーマは、まだ道半ばですが、これからの高齢社会において大きなヒントを与えてくれるものだと思います。私たちの実践を積み重ねることで、その未来を現実のものとしていきたい。そう願いながら、今日も歩き出します。

日本は梅雨の季節に入りました。
どうぞ、雨の日も良い一日をお過ごしください。

↓↓↓詳細はPodcastから「ながら聴取」をしてください。

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