【介護選び】もし介護サービスがなかったら

もし介護サービスがなかったらどうなるか考えたことがありますか？

日本では介護保険制度が導入されて25年目に入り、介護サービスは当たり前の存在になりました。しかし、もしこの制度がなかったとしたら、どのような社会になっていたでしょうか？

介護サービスの必要性を改めて考えることで、私たちの暮らしや未来の社会について整理してみたいと思います。

介護サービスがない社会の未来
介護サービスがなければ、高齢者の生活はどうなるでしょうか。
まず、次のような問題が生じます。

老いを受け入れにくくなる
家族の負担が増える
社会的孤立が進む

人は誰でも歳をとります。
しかし、体が思うように動かなくなったり、認知機能が低下したりすることで、これまでできていたことができなくなると、老いを受け入れることが難しくなります。

さらに、介護が必要になったとき、サポートするのは主に家族です。
もし介護サービスがなければ、家族は仕事や生活を犠牲にして介護を担うことになります。その結果、介護離職が増えたり、介護疲れによる虐待や悲しい事件が起きたりする可能性が高まるのです。

また、社会的なつながりを失い、家の中に閉じこもる高齢者が増えるでしょう。結果として、孤立死や精神的な負担が増え、老いることが「つらいこと」「避けたいこと」として認識される社会になってしまうかもしれません。

もし医療だけに頼るとしたら？
介護サービスがなくなれば、医療サービスに頼るしかなくなります。
しかし、老いは病気ではなく、医療では治せません。

医療機関は治療を目的とする場です。高齢者が医療に依存する社会では、病院での「社会的入院」が増え、病気ではなくても長期入院を強いられる人が多くなります。

病院では、患者としての役割が優先されるため、本人の生活の質が犠牲になりがちです。
例えば、寝たきりの状態が続くと、筋力が衰え、介護が必要な状態が加速してしまいます。認知症の進行も早まる可能性が高くなります。

病気の治療はできても、「その人らしい生活」を取り戻すことは難しいのです。医療だけに頼る社会では、高齢者の尊厳が守られにくくなり、生きる意欲を失う人が増えてしまうかもしれません。

家族の負担と介護離職
介護サービスがなければ、家族の負担は計り知れません。親の介護のために仕事を辞めざるを得ない人が増えるでしょう。

家族の立場からすれば、「仕事を辞めてまで親の面倒を見なければならない」という状況は、経済的にも精神的にも大きな負担になります。

また、親の立場からすると、「自分のせいで子どもが仕事を辞めた」と思うのは、非常に辛いことです。

この負担が続くと、家庭内でのストレスが増し、最悪の場合、高齢者虐待につながることもあります。介護疲れによる悲しい事件が起きるのも、決して珍しいことではありません。

そのため、介護サービスは「家族の負担を減らす」という役割も果たしているのです。

介護サービスは選択の自由を生む
2000年に介護保険制度が始まる以前、日本の高齢者福祉は「措置制度」と呼ばれる仕組みでした。

これは、行政が「この人にはこのサービスを提供する」と決める仕組みで、利用者がサービスを選ぶことはできませんでした。

しかし、介護保険制度が導入されたことで、高齢者自身や家族が「どのサービスを利用するか」を選べるようになりました。

「どこに住んでいても、必要な介護サービスが受けられる」という仕組みがあることで、多くの人が自分らしく生きることができるようになったのです。

介護サービスがある社会の未来
現在、日本の介護は「自立支援」と「重度者対応」の2つを大きな柱としています。

自立支援：介護が必要になっても、自分でできることは自分で行い、可能な限り自立した生活を送る。
重度者対応：重度の介護が必要になっても、その人らしく暮らせるよう支援する。
さらに、地域包括ケアシステムのように、住み慣れた地域で安心して暮らせる仕組みが整えられています。

このような仕組みがあることで、介護が必要になっても「自分らしく生きる」ことができる社会が実現できるのです。

これから、ここから
もし介護サービスがなかったら、高齢者は尊厳を保つことが難しくなり、家族の負担が増え、社会的な孤立が進む可能性があります。

また、医療だけに頼る社会では、生活の質が低下し、高齢者の生きる意欲を奪ってしまうことになりかねません。

介護保険制度が導入されたことで、私たちは「自分らしく老いる」ことができる社会を手に入れました。この制度を守り、より良い介護の形を追求していくことが、今後の課題となるでしょう。

私たちが安心して歳を重ねられる社会をつくるために、介護サービスの役割を改めて見直していきたいですね。