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【尊厳Well-Kaigo】未病という考え方― 病気になる前に「自分を整える」 ―

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】

今日のテーマは「未病(みびょう)」という考え方です。
これは東洋医学でも古くから語られてきた言葉ですが、介護や健康寿命の分野においても、今とても大切なキーワードになりつつあります。

「未病」とは何か?


「未病」とは、まだ病気とは言えないけれど、健康とも言えない状態を指します。
病院に行っても異常が見つからないけれど、なんとなく体が重い、疲れやすい、眠れない――。そんな「なんとなく不調」を感じた経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

特に高齢者の方々にとって、この「未病」の段階をどう過ごすかが、健康寿命を左右する重要なポイントになります。
体調や心の変化を早めに察知し、生活を整えることで、本格的な病気や介護の必要な状態を防ぐことができるのです。

地域での早期発見がカギ
私がかつて関わっていた地域包括支援センターでは、「ハイリスク高齢者の早期発見」が大きなテーマでした。
病気の診断を受けていなくても、「一人暮らしで食事が偏っている」「最近外出が減っている」といった方々を、地域の目で見つけ出すことが重要なのです。

家族、近所の人、地域の活動仲間――。
その人を日常的に見ている誰かが「少し元気がないな」「最近話さなくなったな」と気づくことで、未病のサインをつかむことができます。
そこから食事や運動、心のケアといったサポートを早期に始める。これが、健康寿命を延ばす第一歩です。

「プレエイジングトレーニング(老齢前修練)」という考え方
日本ウエルエージング協会(WAJA)では、「プレエイジングトレーニング(老齢前修練)」という概念を大切にしています。
これは、老いを迎える前から心身を整え、自分らしく生きる力を育てるという考え方です。

かつて「アンチエイジング」という言葉が流行しましたが、私たちは“年を否定する”のではなく、“年を受け入れ、よりよく生きる”という姿勢を重視しています。
それが「ウエルエイジング(Well-Aging)」です。

つまり、年齢を重ねても「健康に」「前向きに」「社会とつながって」生きる。
そのためには、未病の段階でのセルフケアが欠かせないのです。

DSO理論と未病予防
未病の段階では、心の状態も大きく影響します。
朝の散歩で太陽の光を浴びると、脳内では「セロトニン」という神経伝達物質が活性化します。
これは「安心感」や「安定感」を生み出すもので、夜になると睡眠ホルモンである「メラトニン」に変わり、良い眠りへと導きます。

私が提唱している「DSO理論」は、ドーパミン(D)=達成感、セロトニン(S)=安定感、オキシトシン(O)=つながりのホルモンを意識して介護や生活に取り入れる方法です。
この3つのバランスが取れていると、人は自然と前向きに生きられる。
つまり、DSO理論こそが、未病予防の基礎にもなるのです。

孤独と未病の深い関係
最近特に感じるのは、「社会的孤立」と「未病」の密接な関係です。
一人暮らしが増え、会話が減り、外出の機会が少なくなると、心身のバランスが崩れやすくなります。
孤独は、気づかないうちに免疫力や意欲を下げ、やがて病気や介護のきっかけにもつながっていくのです。

ですから、「未病対策」は単なる健康管理ではなく、「人と人のつながりを取り戻す」取り組みでもあります。
声をかけ合う、誰かと食事をする、ちょっとした会話を楽しむ。
こうした日常の積み重ねが、心と体の健康を支える最大の予防になるのです。

ロボットが「未病」を見守る未来
私は今、中国企業と協働しながら、介護ロボットの開発支援にも携わっています。
AIを搭載したロボットが、人の生活を見守り、体調の変化を察知し、声をかけてくれる――。
そんな時代がすでに始まっています。

たとえば、
「今日の顔色が少し悪いですよ」
「水分をもう少し取りましょう」
「最近、歩く距離が減っていますね」

そんなふうにロボットが優しく声をかけてくれることで、未病のサインを早期に見つけられるようになるかもしれません。
これは、人間を置き換える技術ではなく、“人間らしさを支える技術”です。

AIは人の代わりではなく、人を支えるための道具。
AI施設長という構想も、その延長線上にあります。
AIを活用しながら、人間が本来の「優しさ」や「気づき」を取り戻す。
そのような介護・支援のあり方が、これからの時代に求められていくのではないでしょうか。

未来への提案 ― 「AI × 未病 × 尊厳」
これからの高齢社会では、
「年を重ねる=病気になる」ではなく、
「年を重ねる=自分を整える」社会を目指すことが重要です。

そのためには、AIやロボットを恐れず、上手に共存していくこと。
そして、未病というサインを早めに受け取り、心身を整える文化を広げていくことです。

未病の段階で気づき、整え、支え合う。
それが「尊厳ある老い(Well-Aging)」と「尊厳ある介護(Well-Kaigo)」を実現する第一歩になると、私は確信しています。

ご質問は本サイトの「お問い合わせ欄」からお気軽にお寄せください。

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