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【尊厳Well-Kaigo】「Well」を「尊厳」と言い換えて

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


― 日本発の「尊厳介護」を世界共通語に ―

はじめに
こんにちは、利久です。
今日のテーマは「Wellを尊厳と訳す」という、少し哲学的なお話です。

「Well-Being」「Well-Aging」「Well-Kaigo」。
これらの言葉は、私たちが活動の中で大切にしてきたキーワードですが、最近、私はこの「Well」という英語の根っこにある意味を改めて考え直すようになりました。

なぜなら、「Well=より良い」「Well=幸福」という表現の奥に、日本人が長年大切にしてきた“尊厳”という心の文化を重ねたいと感じたからです。

「Well」は単なる“より良く”ではない


「Well」という英単語は一般的に“より良い”“健康な”“幸福な”と訳されます。
しかし、国際的に使われている「Well-Being(ウェルビーイング)」という言葉の本質は、単なる健康状態ではなく、「社会的・精神的にも充実していること」「自分の存在を肯定できていること」です。

WHO(世界保健機関)の健康の定義にも、「健康とは病気でないことではなく、身体的・精神的・社会的に満たされた状態である」とあります。
つまり、健康は“状態”ではなく“関係性”の中にあるもの。
人と人とのつながり、社会の中での自己承認、そして“生きていてよかった”と感じる心の豊かさこそが、Well-Beingなのです。

日本が育んできた「尊厳」という文化
一方で、日本の介護保険制度の目的には、明確に「尊厳の保持」という言葉が記されています。
この「尊厳」という言葉は、単なる精神論ではなく、法の理念として明記された、人間を人間として扱うための基盤です。

たとえば、食事・排泄・入浴といった日常行為の介助においても、本人の意志を尊重する。
命を守るだけでなく、その人が「自分らしく生きている」と実感できるように支える。
そこにこそ、日本の介護文化の核心があると思います。

私は、この“尊厳”という言葉を、単なる倫理ではなく、生き方そのものの哲学として再定義したいと考えています。

「Well=尊厳」としての再構築
そこで私は、「Well」という言葉を「尊厳」と言い換えてみました。

Well-Being → 尊厳ある生き方
Well-Aging → 尊厳ある老い
Well-Kaigo → 尊厳ある介護

このように置き換えると、流れるように一つの人生のストーリーが見えてきます。
人は、尊厳をもって生き、尊厳をもって老い、尊厳をもって支えられる。
「Well」という言葉をこのように捉えると、単なる英語の枠を超えた、人間の普遍的なテーマが浮かび上がってきます。

「介護(Kaigo)」を再定義する
ここで大切にしたいのは、「介護」という日本語の響きを残しながらも、その意味を新しく書き換えることです。

英語では“Care”という言葉が使われますが、そこには「世話をする」「気を配る」というニュアンスが強くあります。
しかし、私が考える介護とは“支援”であり、“共創”です。
お世話ではなく、支え合い。
上から下へではなく、隣に並ぶ関係。

だから私はあえて、「Well-Care」ではなく「Well-Kaigo」とローマ字表記にしました。
“Kaigo”という音を残しつつも、その中身を日本の文化と哲学で再定義する。
これこそが、日本式の尊厳介護(Well-Kaigo)なのです。

中国・アジアへの広がり
この「Well=尊厳」という考え方は、すでに中国やタイ、マレーシアなどでも共感を得ています。
中国では「尊严照护(Zunyan Zhaohu)」という言葉が生まれ、少しずつ現場でも使われ始めています。
仲間の中でも「尊厳介護」という言葉が自然に浸透し、違和感なく受け止められているのを感じます。

つまり、尊厳は国境を越える言葉なのです。
「老い」や「介護」は文化によって形は違っても、「人を人として大切にする心」は世界共通です。
この理念がアジア全体のケア文化を豊かにしていくと確信しています。

「Well」は生き方の指針になる
私が「Well」を「尊厳」と言い換えるのは、単なる言葉遊びではありません。
「より良い」生き方とは何かを、もう一度見つめ直すための問いです。

「Well」は動詞でも名詞でもなく、“状態を超えたあり方”を示します。
だからこそ、健康であるか病気であるかという二分法ではなく、自分らしく生きているかどうかを問いかける言葉なのです。

尊厳とは、他人から与えられるものではなく、自分自身が選び取り、育てていくもの。
それを支えるのが、家族であり、介護士であり、社会全体です。

「尊厳」を基軸とした社会へ
日本が「尊厳介護」という言葉を生み出し、それを制度化したことは世界的にも稀なことです。
この理念を単なるスローガンで終わらせず、教育・ビジネス・文化として定着させる。
それが、これからの私たちの使命です。

高齢者が増えるということは、社会が老いるということではなく、成熟していくということ。
その成熟を支えるのが「尊厳」であり、それを具体的に形にするのが「Well-Kaigo」です。

これから、ここから ― 尊厳から始まるWellの循環
「Well-Being」「Well-Aging」「Well-Kaigo」――
この三つの言葉は、実は一つの円を描いています。
尊厳をもって生き、尊厳をもって老い、尊厳をもって支え合う。
その循環の中に、真の幸福(Well)があります。

これからも私は、「Well=尊厳」という言葉を使い続けていきたいと思います。
日本発の尊厳介護を、アジアへ、そして世界へ。
この理念が、老いる人と支える人、双方の人生を豊かにしていくと信じています。

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