MENU

【尊厳Well-Kaigo】脳科学から見る認知症

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


はじめに
皆さま、こんにちは。利久です。
本日のテーマは「脳科学から見る認知症」です。認知症という言葉が一般に広がったのは比較的最近のことですが、私は1989年の頃からこのテーマに関心を持ち、学びを始めました。当時は教えてくれる人も少なく、書籍を読み、先行している方々から学びながら理解を深めていったのです。

認知症は「病気」ではなく「状態」


まず強く印象に残ったのは、認知症は病気そのものではなく「脳の変化によって生じる状態像」であるということです。脳の器質的な障害により、記憶障害などの「中核症状」が現れ、それに伴って不安や混乱、行動の変化といった「周辺症状(BPSD)」が出てきます。

そして特徴的なのは「自覚が乏しい」点です。高齢による物忘れでは「最近物忘れが多くなった」と自覚できますが、認知症の場合には自覚が薄く、本人も周囲も困惑することになります。

脳の仕組みを学ぶ
「脳が変化するとはどういうことか」。私はまず脳のメカニズムを学ぶことから始めました。記憶の種類には短期記憶・長期記憶・意味記憶・手続き記憶などがあり、それぞれが脳の異なる部位に関係しています。

例えば、日中の出来事は睡眠中に整理・格納されます。また、前頭前野を刺激すると意欲やコミュニケーション能力が高まることも分かってきました。こうした理解は、非薬物療法や学習療法の実践につながっていきます。

学習療法と非薬物療法の効果
東北大学などで開発された学習療法は、脳科学に基づいて組み立てられたアプローチです。簡単な計算や音読、そして即時のフィードバックを行うことで、前頭前野を刺激し意欲や表情の改善につながります。実際に現場で試してみると、60秒かかっていた課題が45秒でできるようになるなど、確かな変化を確認できました。

感覚と環境が与える影響
脳の機能は五感とも深く結びついています。匂いや音楽、光や住環境の違いが行動や感情に影響を与えます。
また、介護士や家族の声のトーンや距離感、目線の合わせ方ひとつで反応が変わることも実感しました。これは「感覚的な経験」ではなく「脳科学に基づく実践」として裏付けられるものです。

個別性に基づく介護
アルツハイマー型認知症、血管性認知症など、種類によって現れやすい症状は異なります。しかし最も大切なのは「その人の人生記憶」に基づいた個別的な対応です。同じ症状名でもAさんとBさんでは反応が違います。だからこそ、脳科学の理解とともに「人生の物語」を大切にすることが尊厳ある介護につながります。

家族とチームで支える
現場で気づかされたのは、混乱を引き起こす要因が「家族の接し方」にもあるということです。例えば「お母さん、私のこと分かる?」と繰り返し尋ねることで本人が動揺し、拒否反応が出てしまうことがあります。短期記憶は失われても、長期記憶は残っている。娘の幼少期の記憶は覚えていても、目の前の60歳の娘は認識できない。その違いを理解していないと、誤解や不信を生んでしまいます。

だからこそ、家族への認知症教育や職員との情報共有が欠かせません。介護士だけでなく、看護師、セラピスト、栄養士、ケアマネジャー、そして家族がチームとなり、多職種連携で支えることが求められるのです。

環境が脳に与える影響
住環境も脳に大きな影響を与えます。個室か多床室か、朝日が差し込むかどうか、写真や思い出の品があるかどうかで表情や行動は変化します。短期記憶と長期記憶を意識しながら、環境を整えることで安心感をもたらすことができます。

音楽・睡眠・生活リズム
近年の研究では、音楽やリズムが動作を引き出すこと、睡眠が脳に大きな影響を与えることも明らかになっています。夜間の排泄支援や環境調整は、脳と生活リズムを整える重要な要素です。

尊厳ある介護を目指して
こうした学びを重ねながら、私は「脳科学からの理解」と「その人の人生への共感」を結びつけることが、尊厳ある介護につながると考えています。認知症になっても人は人らしく、生き切ることができます。そのために私たちは科学的根拠に基づき、同時に人間的なまなざしを持って支えていくことが大切です。

これから、ここから
認知症介護は脳科学だけでは解決できません。しかし脳の仕組みを理解することで、その人の行動や感情の背景に気づき、適切に寄り添うことができます。尊厳を守りながら支える介護こそが、私たちが目指すべき道です。

ご質問は本サイトの「お問い合わせ欄」からお気軽にお寄せください。

↓↓↓詳細は音声配信Podcastから「ながら聴取」をしてください。

Let's share this post !

Author of this article

Comments

To comment

Please Login to Comment.

TOC