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【尊厳Well-Kaigo】ユニット型特養が10人の理由

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


はじめに
皆さま、こんにちは。利久です。
本日は「ユニット型特別養護老人ホーム(以下、ユニット型特養)が10人単位で構成されている理由」について整理してみたいと思います。

日本の介護制度が始まって25年、この仕組みは当たり前のように浸透してきましたが、改めて背景を知ることは、現場をよりよく運営するためにも重要です。

4人部屋から個室へ


2000年に介護保険制度がスタートした当初、特養の多くは4人部屋が基本でした。しかし「個別ケア」「尊厳ある介護」を実現するために個室化が進み、やがてユニット型という仕組みが生まれました。
個室をただ並べるのではなく、10室をひとまとまりにし、そこに共同のリビングやキッチンを設ける。これがユニット型特養の基本構造です。

なぜ10人なのか
それでは、なぜ10人なのでしょうか。
実は「家族の単位」をモデルにした結果なのです。かつての日本の家族は6人から8人、多い場合は10人ほどの構成が一般的でした。両親、子ども、祖父母、場合によっては親戚まで同居することで、大きな「家族スケール」が形成されていたのです。
ユニット型特養は、この「家族」をイメージして10人を1つの暮らしの単位にしました。

家族の営みを再現する
10人単位にすることで、食事や家事を通じて自然な役割分担が生まれます。お母さん役となる介護職員が中心になり、利用者一人ひとりの生活リズムや好みに合わせて食事や支援を調整できます。

「今日は娘が勉強中だから夜食が必要」
「おじいちゃんは晩酌が早い」
「おばあちゃんはお手伝いをしたい」
――そんな多様な暮らしの要望を、10人規模なら対応できるのです。

配置基準との関係
制度上もユニット型は「10人単位」で設計されました。日中は1ユニットに最低1人の介護職を配置、夜勤は2ユニットで1人という基準です。この配置により、3対1といわれる介護職員の配置基準が、実質的には2対1程度に近づき、より手厚い個別ケアが可能になります。

看取り介護とユニットケア
ユニット型特養では、人生の最終段階である「看取り介護」も個室で行えます。同じユニットで過ごしてきた仲間と共に最期の時間を迎え、お別れ会を行うことができる。これは共同生活の延長にある温かな支援であり、ユニットケアならではの価値といえます。

食事と空間の意味
食事は単なる栄養補給ではなく、仲間との関わりや生活の意味を確認する大切な時間です。しかし、大食堂に数十人が集まると個別対応が難しく、認知症の方々に混乱を与えることもあります。
そのためユニット型では10人単位の食卓が基本です。4人掛け、2人掛けのテーブルを工夫することで、一人ひとりの状態に合わせた柔軟な対応が可能になります。

認知症ケアとの関係
ユニット型特養の設計は、認知症ケアにも深く関わっています。個室と共用空間をうまく配置することで、場所や時間の感覚が乱れがちな認知症高齢者に安心感を提供できます。また、介護職員が少人数に集中できるため、きめ細かいケアが実現しやすいのです。

応用と地域包括ケアへ
もちろん、10人に限られるわけではありません。12人や14人の場合は、空間を仕切ったり小グループに分けるなどの工夫が可能です。大切なのは「家族単位」という考え方を基盤にすることです。

さらに、ユニットを超えてフロア単位、施設単位、そして地域包括ケアへと広がっていきます。個室が最小単位であり、ユニットが家族の単位、そして地域全体へとつながる。この積み重ねが日本の介護の歩みでした。

日本の25年の成果
日本は25年間、ユニット型特養を通じて「1人の単位」「家族の単位」を見直しながら、施設運営や教育、認知症ケア、看取りの仕組みを作り上げてきました。その背景には、設計者、行政、介護現場、医療専門職、地域の人々が共に議論し、実証研究を積み重ねた歴史があります。

これから、ここから
ユニット型特養が10人単位で設計された理由は、単なる制度上の基準ではなく「家族の営みを再現する」という深い意図に基づいています。

この考え方を理解しないまま運営すると、本来の力を発揮できません。
改めてその意義を振り返り、今後の施設運営や地域づくりに活かしていただければ幸いです。

↓↓↓詳細は音声配信Podcastから「ながら聴取」をしてください。

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