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【尊厳Well-Kaigo】個室を選んだ理由

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


はじめに
皆さま、こんにちは。
今回のテーマは「なぜ日本の介護施設が個室を選んだのか」です。秋空の下、朝の散歩をしながら考えたことを整理してみました。現在、日本の多くの介護施設は「個室」を基本としています。しかし、かつては4人部屋などの多床室が主流でした。そこから個室へと移行していった背景には、尊厳を守るための大きな転換があったのです。

日本が個室を選んだ背景



日本で最初に「個室」を採用したのは、認知症高齢者グループホームでした。これはスウェーデンの事例を参考に導入され、9室すべてが個室という形でスタートしました。当初ここでは「なぜ個室なのか」という強い意識はなく、むしろ特養の多くは4人部屋が中心でした。しかし、認知症ケアを進める中で「一人の生活単位」を守ることが不可欠だと理解されていきます。

2000年に介護保険制度が始まった際、「全室個室・ユニット型特養」という仕組みがモデル事業として進められました。国の介入研究も加わり、次第に制度として定着していきます。

多床室をめぐる反論と課題
当時、多床室を支持する声もありました。「個室は孤独を生む」「会話が減る」という意見や、「個別ケアは職員の負担が大きい」という現場の懸念です。しかし、実際の調査では、4人部屋の入居者は天井を見つめる時間が多く、ほとんど会話をしていないという事実が明らかになりました。共同生活といっても、必ずしも豊かな交流が生まれるわけではなかったのです。

また、多床室では荷物の持ち込みや家族の訪問にも制限があり、プライバシーが守られにくい状況が続きました。その結果、不安や混乱が増し、認知症の周辺症状(BPSD)が強まる傾向も見られました。

介護教育の変化
個室化は、単に建物の構造を変えるだけではありませんでした。個別ケアを前提とした介護教育が必要となり、国はユニットリーダー研修や管理者研修を義務化しました。これにより、「一人の生活を支える介護技術」を学ぶ仕組みが整えられていきます。

一方で、個室の扉を常に開け放つなど、結果的に「10人部屋」と変わらない運用をする施設もありました。個室のメリットを生かすには、正しい教育と意識が不可欠だったのです。

経営面から見た個室の意義
当初は「個室はコストがかかる」と懸念されましたが、追加調査では逆の結果も見えてきました。多床室の方が赤字が多く、職員の負担も大きいことが分かったのです。初期投資は個室の方が高くても、長期的には人件費や運営コストが抑えられ、結果として効率的だという結論に至りました。

また、ユニット型特養は介護報酬が若干高く設定されており、個別ケアを支える仕組みも制度的に整えられています。つまり、介護の質と経営の持続性を両立させるために「個室」が選ばれたのです。

医療モデルとの違い
病院は依然として多床室が基本です。しかし、治療を目的とする病院と、生活を支援する介護施設では役割が異なります。病院モデルをそのまま高齢者施設に当てはめても、尊厳ある暮らしは実現できません。介護施設は「生活の場」である以上、一人ひとりの空間を大切にする必要があるのです。

国際的な視点から
中国やマレーシアなどでは、補助金制度の影響で2人部屋や多床室が主流となっています。しかし、日本の経験から学べることは大きいと思います。認知症高齢者の生活の安定や、介護職員の働きやすさを実現するためには、個室化が重要な一歩となるからです。

私自身、住宅業界の経験から「個室」を自然に受け入れることができましたが、医療の視点からは抵抗も強かったように思います。その違いを理解することも、今後の国際交流において大切です。

これから、ここから
日本が「個室」を選んだのは偶然ではなく、介入研究や現場の試行錯誤を重ねた結果でした。4人部屋の不都合や利用者の尊厳を守る難しさを明らかにし、国として制度化していった歴史があります。

この経験を伝えられるのは、当時を知る私たち世代です。議論と実践の積み重ねが生んだ成果を、これからアジア各国にしっかり届けていきたいと思います。

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