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【尊厳Well-Kaigo】「食べる力」とはいのちをつなぐ行為

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】


〜介護における「食べること」を科学的・人間的・実践的に考える〜

食べる力と介護をめぐる視察と議論
今回のテーマは「食べる力と介護」についてです。最近、中国からの介護関係者の視察が続いており、食支援や口腔ケアについて議論する機会が増えています。

日本では当たり前となった「食事介助」や「食べること」の支援も、他国ではまだ議論の入り口段階にあります。だからこそ、日本で積み上げられてきた実践の意味を、改めて見つめ直す必要があるのです。

食べることは“いのちの連鎖”である
食べるという行為は、「噛む」「飲み込む」「消化する」という一連の流れによって成り立っています。これらがうまく連携しないと、「誤嚥性肺炎」などのリスクが高まり、命に関わる重大な結果を招くこともあります。

特に高齢者の場合、咀嚼力や嚥下力の低下により、食べることが困難になります。これに対応するためには、食事の姿勢や食材の硬さ、とろみの付け方、一口の量やスピードなど、細やかな配慮が欠かせません。

舌・喉・口腔…すべてが連動する仕組


口腔ケアや衛生管理は、誤嚥性肺炎の予防にも直結します。歯科医師や歯科衛生士との連携によって、入れ歯の調整や歯周病ケアも重要な支援になります。

さらに、介護職員だけでなく、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・栄養士など、多職種によるチーム支援が求められます。それぞれの専門性が統合されて初めて、安全で尊厳ある「食事支援」が実現できるのです。

医療と介護で異なる「食べる」の意味
医療現場では、栄養補給は治療の一環であり、必要があれば食事制限や経管栄養が行われます。一方、介護現場では「生きるために、人生を全うするために食べる」という視点が主軸です。

私は以前、「点滴はもういらない」という共著で、本当に必要な医療と、人生を支える介護の違いを訴えました。最期まで自分の口から食べることを大切にする介護の在り方が、尊厳ある生き方を支えていると信じています。

中国との比較で見えてくる課題
中国でも口腔ケアやとろみ食は導入されつつありますが、まだまだ発展途上という印象があります。医療の中で行う支援と、介護施設での生活支援としての支援とは、意味も仕組みも異なります。

特に、摂食嚥下機能の評価や、食形態の調整を担う歯科医の数が不足しており、地域によっては仕組みそのものが成り立っていないという現実もあるのです。

「施設で標準化して在宅へ」 という流れ
私たちは、こうした高度な支援をまずは施設で実践し、仕組みとして確立させてから在宅へ展開する方法をとってきました。介護施設は「実験場」でもあり、現場での成功事例を地域に応用することが、最も現実的な方法なのです。

専門職とチームケアがいのちを支える
食べることは、まさにチームケアの象徴です。誰か一人が支えればよいのではなく、すべての専門職がそれぞれの役割を果たし、連携することで初めて、安心して食べることができます。

その連携を設計するのがケアマネジャーであり、現場をまとめるのが施設の管理者です。これが機能すれば、良い施設づくりにつながり、事故のリスクも低減されます。

家族への理解促進がカギ
食べることの支援には、家族の理解も欠かせません。しかし、食べられない=点滴という誤解も多く、それを丁寧に説明しなければなりません。
点滴が体に負担をかけることもある、むしろ「食べること」こそが人間らしさを保つ尊厳であるという理解を、丁寧に共有していく必要があります。

言葉の壁と専門性の壁を超えて
私自身、介護保険が始まった頃には「誤嚥」や「咀嚼」などの専門用語に戸惑いながら、医療関係者と議論を重ねてきました。ある時、医師から「医療の領域に介護が口を出すな」と言われた経験もあります。
しかしその医師は、数か月後に謝罪し、「介護だからこそできることがある」と理解を示してくれました。

中国に伝える覚悟と問い
中国の介護関係者にこの話を伝えると、沈黙が訪れることがあります。おそらく、自分の中で深く内省しているのだと思います。「どう生きて、どう最期を迎えるか」という問いに、国や制度は関係ありません。人間として向き合う必要のあるテーマです。

だからこそ、私たちはあえてこのテーマを中国にも伝えていきます。それが、尊厳ある介護=Well-Kaigoの使命であり、私たちの覚悟でもあるのです。

これから、ここから
食べる力を支えることは、命を支えること。
それは医療と介護の壁を越え、文化を超えて、
すべての人に共通する“生きる力”の原点です。

↓↓↓詳細はPodcastから「ながら聴取」をしてください。

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