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【尊厳Well-Kaigo】良い視察のつくり方

【末尾に英語、中国語、タイ語の翻訳文を挿入しております】
文末附有中文、泰文和英文翻译
ส่วนท้ายมีการแปลเป็นภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษ
Translations in Chinese, Thai, and English are provided at the end.


~“見学”から“共創”への第一歩~

アジアからの視察が増えています
最近、アジア諸国、特に中国やマレーシア、タイなどの国々から、日本の介護施設や関連機関への視察が急増しています。
私自身も、その受け入れやプランづくりに携わる機会が多くなりました。

視察に来られる方々の背景や目的は様々ですが、視察を“ただの見学”で終わらせず、お互いに実りある時間にするためには、丁寧な準備とアフターフォローが欠かせません。

良い視察には「設計」が必要です


視察を成功させるためには、視察者の国の社会状況や制度の成熟度、来訪者の専門性や立場をよく理解した上で、「どんな学びを持ち帰ってほしいか」を明確にすることが重要です。

視察先の施設にとっても、「なぜ受け入れるのか」「視察がどんな意味を持つのか」が共有されていなければ、負担だけが増えてしまいます。

つまり、視察とは「観光」ではなく、「教育」であり「国際協働」の第一歩なのです。

私の記憶に残るデンマーク視察体験から
25年以上前、私は介護保険が始まる前の日本から、デンマークを視察しました。あの経験が、今も私の指針になっています。

もっとも印象に残っているのは、デンマークの訪問介護です。私は自転車に乗ってヘルパーさんの同行訪問に参加しました。日本とは違うブレーキシステムの自転車で、少し戸惑いましたが、それも貴重な体験でした。

現地の高齢者のお宅に伺い、どのように介護が行われているのかを間近で見ることができました。訪問の頻度やヘルパーとの会話、生活空間の様子まで、すべてが学びでした。

管理者の評価は利用者が決める


また、デイサービス施設の視察では、管理者の方が「自分の評価は利用者が決める」と話していたのが強く印象に残っています。

その施設はNPO法人に近い形態で運営されており、管理者の評価が利用者からの信頼に基づいて、最終的には行政にまで反映されるという仕組みになっていました。
日本ではまだ一般的ではないその考え方に、私は大きな感銘を受けました。

“施設は作らない”という考え方


デンマークでは、「施設はもう作らない」と断言していた専門家がいました。
高齢者が見慣れた街で、その人らしく生きていけるように、街全体を「高齢者に優しい」ものに変えていくという「エイジング・イン・プレイス(Aging in Place)」の思想です。

高齢者住宅や福祉器具(リフトや車椅子など)の活用も含め、テクノロジーをうまく使って支える仕組みがすでにできあがっていました。

普通の暮らしを見せてもらうことの意味
視察では、介護施設だけでなく、大学教授夫婦のお宅にも訪問させていただきました。そこでは、ユニバーサルデザインに配慮された住宅の中で、ご夫婦が穏やかに暮らしていました。

「この蛇口は軽くひねるだけでお湯が出ますよ」といった何気ない説明の中に、高齢者が安心して暮らす工夫が詰まっていると実感しました。

視察で見るべきは“制度の裏側”
視察の中で私が重要だと考えるのは、表面的な設備やサービスだけではありません。その背景にある制度、文化、価値観を「深掘り」していくことです。

たとえば、ある認知症グループホームでは「お風呂に入れなくなったときが施設移行の目安」と話されていました。つまり“生活の中で何ができるか”がサービス選択の基準になっていたのです。

今、私が視察をつくる立場に
かつて視察に行っていた私が、今は視察を受け入れる立場になりました。中国やマレーシアなどからの視察者に対し、ただの施設案内ではなく、ディスカッションを重ねながらその国に合った学びを提供するよう努めています。

来日前のヒアリング、視察中の振り返りセッション、帰国後のアフターフォローなどを一貫して行うことで、視察を“共創の始まり”と位置づけています。

日本式介護のコピーは意味がない
日本の制度やサービスをそのままコピーしても、海外ではうまくいきません。それぞれの国の文化や制度に合わせて“翻訳”し、現地の課題に即した形で実装していく必要があります。

視察をきっかけに、「私たちの国ではこうしてみよう」という自国発の計画が立ち上がること。それこそが、視察が果たすべき役割です。

視察は国際共創の入り口
デンマークの人たちが日本に来て、ノウハウを共有してくれたように、今後は中国の方々とも一緒に現地で仕組みをつくっていくフェーズに入っていきます。

そのためには、まず「良い視察」をつくることが第一歩です。

これから、ここから。
“視察”は、過去の成功事例をなぞる旅ではなく、未来を共に創る始まりなのです。

↓↓↓詳細はPodcastから「ながら聴取」をしてください。

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