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【尊厳Well-Aging】高齢化率と平均寿命から読み解くアジアの課題構造

【末尾に英語、中国語、タイ語の翻訳文を挿入しております】
文末附有中文、泰文和英文翻译
ส่วนท้ายมีการแปลเป็นภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษ
Translations in Chinese, Thai, and English are provided at the end.

数字の背後にある社会課題を見る
私たちはつい、介護や高齢化の話題になると、制度の違いや整備状況に目を向けがちです。しかし本当に大切なのは、「その国がどんな課題構造を抱えているのか」という視点です。今回は、マレーシアと中国というアジアの2つの国を例に、高齢化と平均寿命から見えてくる社会課題を読み解いていきます。

マレーシアの高齢化率と“前倒しの介護戦略”
マレーシアにおける65歳以上の高齢化率は現在8.1%、60歳以上では11%に達しています。そして2030年には、65歳以上が15.3%にまで上昇すると見込まれています。平均寿命は77歳、健康寿命は64歳とされています。

注目すべきは、この「健康寿命と平均寿命のギャップ」です。13年間にわたって何らかの介護的支援が必要になる可能性がある、ということです。

特にマレーシアでは、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が60代から急増し、早い段階で要介護状態に入ってしまう人が多いのが現状です。これは、日本のように「高齢期に集中して支援するモデル」では対応しきれないことを意味しています。

予防と生活改善から始まる「前倒し型」介護戦略
したがってマレーシアに必要なのは、いわゆる「前倒し型」の介護戦略です。つまり、病気になる前、介護が必要になる前から、生活習慣の見直しや予防活動を通じて支援を始めるというアプローチです。

ここで、日本が長年培ってきた尊厳ある介護や認知症支援の知恵が生きてきます。ただし、それをそのまま導入するのではなく、マレーシアの文化的背景や宗教、制度の成熟度にあわせて柔軟に翻訳・調整する必要があります。

「家族を支える仕組み」や「地域で支える体制」として再構築し、ともに学び、ともに創る“共創”の姿勢が求められるのです。

中国の高齢化:量と質の“同時課題”
一方で、中国の状況はさらに複雑です。中国では、65歳以上の高齢化率が21.1%、60歳以上では15.4%となっており、すでに「超高齢社会」に入ったといってよいでしょう。平均寿命は77.5歳、健康寿命は68.7歳。日本と同等水準に近づいています。

しかし、問題は「高齢者を支える“量”の不足」と「尊厳を支える“質”の課題」が同時に進行しているという点です。

支える人が足りない、支え方も追いつかない
都市化の進行により、大家族の支援機能が失われる一方、介護人材の育成も追いついていません。そのため、支援を必要とする高齢者が増え続けるなかで、「誰が、どのように支えるか」が大きな社会問題となっています。

また、支援の中身に目を向けたとき、「尊厳を守る介護とは何か」という“質”の視点も決定的に欠けている場面が少なくありません。単なるサービス提供ではなく、その人の生き方や感情、価値観をどう守るかという問いが今、求められているのです。

制度ではなく「課題の翻訳」が必要な時代
ここで重要になるのが、「制度の輸入」ではなく、「課題の翻訳」という考え方です。つまり、日本で成功しているモデルをそのまま輸出するのではなく、それぞれの国が抱える構造的な課題を見極めたうえで、その国の文脈に合った解決法に翻訳するというアプローチです。

例えば、尊厳介護という概念ひとつとっても、文化や宗教、生活習慣によって意味づけは異なります。だからこそ、“翻訳”とは単なる言葉の置き換えではなく、価値観や実践の仕組みごと柔軟に変換していくプロセスなのです。

これから、ここから:アジアとともに創る未来
高齢社会は、もはや日本だけの問題ではありません。むしろ、アジア全体が直面する共通課題になりつつあります。だからこそ、日本が先に経験した知見を、アジア各国と共有しながら、ともに未来を築いていく責任があると感じています。

マレーシアと中国、それぞれの“課題構造”に目を向けながら、日本の尊厳ある介護の知恵を翻訳し、調整し、共創する。その先にこそ、アジア型Well-Agingの未来が見えてくるのではないでしょうか。

↓↓↓詳細はPodcastから「ながら聴取」をしてください。

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