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【尊厳Well-Kaigo】選択を“倫理”から“尊厳”へ

【多言語ブログ/末尾に中国語、タイ語、英語の翻訳文を挿入しております】
【多语言博客/文末附有中文、泰文和英文翻译内容】
【บล็อกหลายภาษา/มีคำแปลภาษาจีน ภาษาไทย และภาษาอังกฤษอยู่ท้ายบทความ】
【Multilingual Blog / Translations in Chinese, Thai, and English are included at the end of the article】

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【尊厳Well-Kaigo】選択を“倫理”から“尊厳”へ
〜「正しさ」より「その人らしさ」を支える介護のあり方〜

【尊严Well-Kaigo】选择:从“伦理”走向“尊严”
〜支持“个人特色”胜于“正确标准”的照护方式〜
【ศักดิ์ศรีWell-Kaigo】การเลือกจาก “จริยธรรม” สู่ “ศักดิ์ศรี”
〜แนวทางการดูแลที่สนับสนุน “ความเป็นตัวตน” มากกว่า “ความถูกต้อง”〜
【Dignity Well-Kaigo】From “Ethics” to “Dignity” in Choice
〜A caregiving approach that supports individuality over correctness〜

はじめに:選択は“倫理”である、という気付き

今日は、「選択を倫理から尊厳へ」というテーマで、介護における“選択”のあり方について考えてみたいと思います。

このテーマを選んだきっかけは、「選択は倫理である」という、ある哲学者の言葉との出会いでした。
病院医療において、患者が治療方針を選べることが“倫理”とされるように、介護でも“選べる”ということ自体が重要な意味を持つのではないか──そう感じたのです。

措置制度から介護保険へ:選択が始まった瞬間


かつての日本では、介護は「措置制度」のもと、地域や所得に応じてサービスが“割り当てられる”ものでした。
利用者が自分で事業者を選ぶことなどできず、「このサービスを受けてください」「費用はこれだけです」と一方的に決まっていたのです。

しかし2000年、介護保険制度が始まり、サービスの“市場化”が進みました。
つまり、利用者がサービスや事業者を選べるようになったのです。これは介護の歴史における大きな転換点でした。

「倫理的選択」と「尊厳ある選択」は違う?
選択が可能になったとはいえ、その選び方が「正しさ」に縛られてはいないでしょうか。
「この施設が評価が高いから」「このサービスのほうが専門性があるから」といった“倫理的に正しい”選択ではなく、
「私はここが落ち着く」「私にとって心地よい」といった“その人らしい選択”を、私たちはどれだけ支えているでしょうか。

これこそが、「倫理から尊厳へ」という視点の転換なのです。

情報整理と専門家の伴走がカギ
介護サービスを選ぶには、多くの情報が必要です。
在宅か施設か?事業者ごとの特色は?費用は?地域資源は?
こうした情報を整理し、本人にとっての“幸せな選択”を支えるのが、専門家の役割だと思います。

「正しさ」に導くのではなく、「あなたにとっての最善は何か?」を一緒に考える。
これが尊厳ある選択支援の土台となるのです。

「旅行」にも似た選択のかたち
私はよく介護の選択を「旅行のオプション」に例えます。
基本のプランは決まっていても、その中からどこに行くか、何を食べるかは自分で選ぶ。
同じように、介護でも「制度の中で与えられた選択肢」の中から、「自分に合ったもの」を選ぶ力と権利が必要です。

自分で選べないときのもどかしさ
高齢になったり、認知症を患ったりすると、自分で選ぶ力が弱まってきます。
そのとき、家族やケアマネージャーに選択を委ねることもありますが、
「自分で決めなかった」という感覚が、後から不満や後悔を生んでしまうことも少なくありません。

ですから、本人の“声”を引き出す仕組みや時間、そして「決めるまでのプロセス」に寄り添う支援が、ますます重要になります。

海外の事例:中国での“選択”のコスト
先日、中国の介護関係者と話す機会がありました。
その中で話題になったのが、シーツや枕パッドなど“におい対策”の商品の選択についてです。

日本では「洗って繰り返し使えること」が高く評価されますが、中国では洗濯コストがかかるため、「使い捨てのほうが安い」という声も多く聞かれました。
ここでも、「制度と文化」が選択に大きく影響を与えていることが分かります。

“正しい選択”ではなく“あなたらしい選択”を
選択は、制度の枠組みの中だけで行うものではありません。
「洗濯機が使える部屋かどうか」「家族が洗ってくれるのか」「自分の下着を誰が洗うのか」──
そんな一つひとつが“尊厳”に深く関わる選択なのです。

「どちらが安いか」だけではなく、「どちらがあなたらしいか」。
その視点を大切にしたいと思います。

成熟する社会にふさわしい“選択支援”へ
日本はすでに成熟した高齢社会です。
これから求められるのは、“誰かに決められる介護”ではなく、“自分で決める介護”への転換です。

そのためには、「正しさ」を教えるだけでなく、「その人が納得できるプロセス」を支える介護者の姿勢が問われます。

最後に:Well Agingは“選ぶ力”を育てること
Well Agingとは、年を重ねることを前向きに捉える生き方です。
それは同時に、「私はこう生きたい」と選ぶ力を養うことでもあります。

制度やサービスの充実だけでなく、「私らしい選択」を支える仕組みが整ったとき、
私たちは真に“尊厳ある社会”に近づくのではないでしょうか。

前回の投稿もご高覧ください
【尊厳Well-Kaigo】介護と研究の関係〜「現場の問い」が未来をつくる〜
👉 https://wellaging.site/20250620wellaginghour/

↓↓↓詳細はPodcastから「ながら聴取」をしてください。

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