【介護選び】家族と共同運営

介護事業は今、大きな転換期を迎えています。
人手不足、テクノロジーの活用、生産性向上のための制度導入など、さまざまな取り組みが進められています。
しかし、その中で見落としがちなものは「家族の力を借りること」です。

介護の現場において、家族の関わりは非常に大きな意味を持ちます。
特に、入居型の介護施設では、家族が単なる「利用者の親族」ではなく、施設運営の一部として関わることで、より良い介護環境が生まれるのです。

家族と共同運営するという考え方
私がこれまで働いてきた特別養護老人ホーム（特養）では、必ず「家族会」が存在していました。
これは単なる家族同士の交流の場ではなく、施設運営において重要な役割を果たす組織でした。

多くの施設では、家族会を設置することが必須とはされていません。
しかし、家族と共に運営するという方針を持つことで、介護の質が向上し、入居者本人の満足度も高まることが明らかになっています。

施設で家族会を設立する場合、家族自身が主体となって組織を作ります。
しかし、放っておいても家族は動きません。そこで、施設側がさまざまな企画を提案し、家族が積極的に関われる場を提供することが重要です。まるで学校のPTAのような仕組みをイメージすると分かりやすいかもしれません。

家族会がもたらすメリット

家族会が存在することで、施設と家族の間に信頼関係が生まれ、介護の質が向上します。
また、家族同士がつながることで、情報共有や悩みの相談がしやすくなり、孤独感の軽減にもつながります。

例えば、施設での夏祭りやお正月のイベントは、家族会との共同開催にすることで、家族がより積極的に関われる場となります。家族がイベントの飾り付けをしたり、受付を担当したりすることで、入居者もより楽しい時間を過ごせるのです。

また、家族が施設の運営に関与することで、職員の負担も軽減されます。
介護職員が常に家族の視線を気にしながら仕事をするのではなく、家族と共に支え合う関係が築けることで、より前向きな環境が生まれます。

家族の役割と施設の役割
「家族はお客様」という考え方もありますが、実際には「家族と共に入居者の介護を行う」という視点が重要です。
施設側がすべての介護を担うのではなく、家族にもできる範囲で役割を持ってもらうことが理想的です。

例えば、可能であれば家族が食事の介助をする
入浴時に話しかけるだけでも良い
家族が訪問する日は特別な日として、入居者の気持ちを高める
こうした関わり方が、入居者のQOL（生活の質）向上につながります。

もちろん、家族に過度な負担を求めるのではなく、あくまで「共に支える」ことが大切です。
家族が無理なく関われるように、施設側が適切なサポートを提供することが求められます。

家族の関与が介護の未来を支える
現在、多くの介護施設が人手不足に直面しています。
外国人介護人材の活用やテクノロジー導入が進められていますが、それだけでは解決できない課題もあります。
そこで、地域や家族の力を最大限に活用することが、今後の介護において不可欠になっていくのです。

「家族と共同運営」という考え方は、単に施設の運営を助けるだけでなく、入居者本人の幸福感を高め、家族の介護負担を軽減する効果もあります。

介護を選ぶ際には、家族会が存在する施設や、家族が積極的に関われる仕組みのある介護サービスを選ぶことをおすすめします。そうすることで、より良い介護環境を実現できるのです。

介護は決して施設だけの仕事ではありません。
家族と介護事業者が協力し合うことで、より充実した介護が実現できるのです。
ぜひ、家族の役割を再認識し、共に支え合う介護を目指していきましょう。